拝啓 空の上の君へ

この「おまじない」は僕が小さい頃に聞いた話。

まだ御剣や矢張にも出会う前。

そんなことを思い出しながら僕は便箋に宛名を書いた。

 拝啓 空の上の君へ

:拝啓   綾里千尋様

こんな子供だましな手で僕の思いを伝えられるかは分かりませんが,もし届けば目を通して欲しいです。

最近,殺人事件の弁護の依頼が立て込んでいてあまり近況報告が出来なかったのですが

貴方になら全て,僕や真宵ちゃんの心情まで空の上から見えるんだと思います。

今だから言える事がある。僕は千尋さんにきっと惹かれていたんだと思います。

僕が被告人として立ったあの事件。そして僕が貴方の傍で闘った事件の数々。

その依頼人を最後まで信じぬくその純粋な心に。

でも,貴方はもういないことは分かっています。

だからこそ,このことを伝えたいのです。

もちろん,真宵ちゃんのことです。

彼女は千尋さんが亡くなってから,僕の助手として頑張ってくれました。

そんな彼女とは裏腹に僕は貴方を失ってしまった喪失感を拭いきれなかった。

一番傷ついたであろう彼女はすぐに立ち直り,僕の傍で頑張ってくれていたというのに。

彼女には本当に申し訳ないと思っています。

それは,もちろん真宵ちゃんに恨まれても仕方の無いくらい。

真宵ちゃんと千尋さんは姉妹だというのに全然違った。

それが,千尋さんへの思いを捨てきれなかったあの頃。

真宵ちゃんには酷く当たってしまいました。

弁護士の自分にとって,大人の男として,彼女の上からの目線には相当苛立っていましたし。

千尋さんの代わりになんかならない。こんな子,弁護しなければ良かったなんて思った時期もありました。

でも,それでも霊媒という特殊な能力を持った彼女を必要としていたのはやっぱり貴方がいたからです。

何かあればすぐ,千尋さんを呼んで欲しいと彼女に言い寄っていました。

それは裁判に勝つためではなく,自分の心の大きな隙間を埋めたかったからだと思います。

本当に情けない話ですね。真宵ちゃんだって人間なんだから。

彼女だって本当はとっても傷ついたんですから。

それが千尋さんに伝えたいこと,謝罪です。

あなたの大切な妹を深く傷つけてしまったこと。

そして,僕が伝えたいこと。

真宵ちゃんは今,僕にとって最高のパートナーです。

今まで僕は彼女を妹,あるいは大切な助手として接していました。

でも,僕は気づいた。

それは葉桜院の事件のとき。

僕は彼女が心配でいても立ってもいられなくて・・・。

焼け落ちた橋を渡りきるなんて不可能なのに。

分かりきっていたのに僕は動かずにはいられなかった。

そこに立っているままでは彼女はもう僕の手の届かないところに行ってしまうかもしれないっと思って。

そんな事件が終わり彼女はまた涙も見せずに笑顔を振りまいていました。

彼女は本当に強い子なんだって分かりました。

その時,気づいたんです。

僕は彼女を,真宵ちゃんを・・・ずっと,ずっと前から好きだったんだって。

千尋さんに,最後のお願いです。

真宵ちゃんを,妹以上に好きになってしまったこと,許してください。

もうすぐ倉院の家元になるため帰ってしまうまでだけでも。

彼女を愛することを許してください。

それが・・・・僕の最後の願いです。

 

この思いが通じたならば,返事でもくれると嬉しいです。

 

敬具 成歩堂龍一:

 

ガラッ

「なるほど君ー。終わったよ。」

「ありがとう,助かったよ。」

「何書いてたの?その便箋。」

「ちょっとね。さっ,ミソラーメンでも食べに行こうか!」

「おぉ!今日は2杯+餃子だからね!」

「まったく,真宵ちゃんには適わないな。」

 

 

 

 

 

 

 

君の傍にいれるだけで僕は幸せだった。

だから,あと数日だけでもいいから夢をみさせてほしい。

 

君への謝罪と愛を込めて。

 

 

 

ナルチヒからのナルマヨでした。

真宵ちゃんは相当辛かったと思います。

逆転裁判~蘇る逆転~の彼は2や3に比べて相当キツいですから。

この手紙を読んだ千尋さんからの小説と,偶然便箋を見つけてしまった真宵ちゃんの気持ちも

書きたいと思います。

 

 

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